愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



び、びっくりした……。

だっていきなり顔なんて近づけるから。熱くもなっちゃうよ。

けど清貴さんは普通の顔してたし、慣れてるんだろうなぁ。



思えば私、もともと恋愛経験多くはないし、異性に慣れてるわけじゃないんだよね。

夫婦になることが目的とはいえ、よくこれで結婚なんて思えたなぁとは自分でも思う。

だけど近づいて動揺してしまったり、熱くなったり……彼を異性として意識し始めている気がする。





……ところが。

そんなドキドキの夜からひと晩明けた翌朝。

私がいつも通り朝食を作っていたところ、起きてきた清貴さんの様子がなんだかおかしい。



「おはようございます、清貴さん」

「……春生。おはよう」



挨拶を返してくれるのはいいけれど……私にではなく、柱に向かって声をかけている。

席に着こうとして思い切りダイニングテーブルにぶつかっているし、さらにはお豆腐にかける醤油をごはんにかけている。



「わっ清貴さん!?ごはんに醤油ですか!?」

「……間違えた。まぁ食べられなくもないだろ」

「いやいや、絶対しょっぱいですって!」



醤油でビチャビチャになったごはんをそのまま食べようとする彼に、私はお茶碗を取り上げて、とりあえず新しくごはんをよそり直してお茶碗を渡した。



いつもの清貴さんならこんなうっかりなんてしないのに。なんか変だ。

……まさか。


  
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