愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「綺麗……」
柵につかまり空を見上げていると、背後から伸びた手が同じように策を掴む。
後ろを向くと清貴さんが自分と柵の間に私を挟むように立っていることに気がついて、心臓がドキリと跳ねる。
な、なんで隣じゃなく後ろに……!?
近く体に緊張して、柵を握る手に力が入る。
最初はあんなに遠かったのに。こうやって不意打ちで自然と距離を詰めるから、ずるい。
景色を見る余裕などなくなってしまい、頭上にある彼の顔を見上げた。
船の明かりに照らされて、そのヘーゼルカラーの瞳がいつも以上に輝き美しい。
「綺麗ですね、清貴さんの目」
思わず口に出すと、彼は私の視線に気づいたようにこちらをみた。
「そうか?子供の頃はからかわれることが多くて、俺はあまり好きじゃなかったんだが」
「えっ、キラキラしてて素敵だと思うんだけどなぁ」
目を覗き込むように見つめて言うと、清貴さんは瞳を細めて小さく笑う。
「俺は、春生の目の方が綺麗だと思う」
「そうですか?普通の真っ黒な目ですけど……」
「色や形じゃない。真っ直ぐで芯のある瞳だ」
言いながら私の頬に手を添え、親指でそっと目の下を撫でる。
……褒められたお礼に、お世辞で言ってくれてるだけかもしれない。
だけど優しいその指にいとしさを感じて、私は甘えるようにその手に顔をすり寄せた。