愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



スニーカーを履いて家を出ると、旅館の敷地を抜け、記憶を辿りながら道を行く。



確か、旅館前の通りを少し歩いた先に細い道が一本あって……と歩いて行くと『この先500メートル先 宝井神社』の看板があった。

看板に従い500メートルの道のりを行き、長い石段をのぼると、そこには赤い大きな鳥居を構えた神社があった。

宝井(たからい)神社』と石柱に書かれている。



「宝井神社……」



境内は広々としており、いくつもの社殿から成る大きな神社だ。

数名の女性たちが、おみくじを引いたり絵馬を書いたりと盛り上がっている。



有名なところなのかな。

箱根は全域がパワースポットという人もいるくらいだ。ここもなにかご利益があるところなのかも。



そう思いながら、拝殿にお賽銭を投げ、軽く手を合わせてお参りをすませる。

そしてなにげなく辺りを見回すと、拝殿の右隣奥にはお守りの販売や御朱印を受け付ける社務所があった。



窓口は席を外しているようで誰もいない。そんな中、数多く並ぶお守りを見る。



お守りが沢山……しかも恋愛のお守りばかり。

出会いを呼ぶものから縁結び、恋愛成就……。様々な種類がカラフルに並んでおりとてもかわいらしい。



「こんにちは」



お守りをまじまじと見つめていると、突然声をかけられた。

その声に振り向くと、そこにいたのは白い着物に浅葱色の袴を履いた男性。



黒い髪に垂れ目がちな二重をした彼は、穏やかににこりと笑った。


  
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