愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「ある時彼に告白されて……私は先輩としてしか見ていなかったのでお断りしたんです。でも、納得してもらえなくて」
それは、昨年末のことだった。
『僕、杉田先生のことが好きなんです』
『ごめんなさい……村瀬先生のことは先輩としてしか見てなくて。それに、私自身仕事のことでまだ頭がいっぱいで』
彼からの告白に、自分なりに丁寧に断ったつもりだった。
だけど彼からの好意は年明け後も変わらず、寧ろ徐々に激しさを増していった。
『好きなんだ!杉田先生のこと、諦められなくてっ……』
『ごめんなさい、前にもお伝えした通り私は村瀬先生とはお付き合いできません』
気持ちを伝える彼に心苦しくなりながらも断り、同じ会話を繰り返した。
「今思えば他の先生にも相談しておけばよかったんですけど……彼の教師としての立場もあるしと思って言えなかった」
きちんと答えればいつか諦めてくれる、そう思っていた。
……けど、自分の考えの甘さが事態を引き起こした。
甘かった自分への悔しさが思い出されて、私は浴衣の裾をぎゅっと握る。
「ある日の放課後、資料室で仕事をしていたら彼がきて、押し倒されて襲われかけて……なんとかして、逃げたんですけど」
今もまだ、思い出すだけで手が震える。
『好きなんだ、きみがどうしてもほしい……なのにどうしてわかってくれないんだ!』
『やだっ……やめて!!』
薄暗い部屋で、力づくで床に押し倒された。
理性を失ったその目と荒々しい息遣い。
体にのしかかり息を止めるような体の重み。
全てが怖かった。
その体を思い切り蹴り飛ばして押し除け、なんとか逃げ出したけれど、そのまま家に帰ってからも、恐怖に一晩中震えて泣いた。