神埼探偵事務所





午前8時過ぎ。

いつもより早い出発だけど、今日は警視庁に行って久本さん達との会議が有る。


相変わらず私の事を連れて歩き回る大河は、さすがに昨日は実家と云う事も有って手を出してこようとしてこなかったけど……。

コイツの性格だと大阪に帰ってから『俺はあの時我慢したんだから』くらいのドヤ顔で、ひたすらに私を抱くだろう。


でも、嫌だとは思わないんだから私もすっかり大河にハマってる。


今日は大河パパも同席との事で、可愛いママに見送られながら3人で朝日を浴びようと扉を開けた時だった。

ジャージを着た40代頃の男性二人が私達を見つけるなり、門の前まで身体を引っ付けてボイスレコーダーの様な物をこちらに向けてくる。

「文冬か。」


「え、文冬って週間文冬?」

「おん。あいつらが俺の事を一番最初に抜いた記者。未だに顔覚えてるから間違いねえ。」


文冬と云えば、取材が結構強引な事で知られている。ちょっと私の顔がこわばったのが分かったのか、大河と大河パパが私を守る様に一歩、ニ歩と前に進み盾になってくれた。


「どちら様ですか。」


「いやいや、お世話になってます。私達週間文冬の記者、山田と田中で御座います。あの〜この度、神埼大河様に良い女性が出来たと云う情報を聞いたのですが、それの真偽の方を確かめたく……。もしかして、その後ろに居る可愛い子がその女性ですかね?」

とカメラを向けようとした山田と名乗った記者の前に立つなり、いつもの何倍も低い声が静かな住宅地に響く。


「うるせえんだけど。聞くなら事件の事にしてくれない?」



「……あ、あのっ」


「上野連続誘拐事件が相当行き詰まってるみたいですけど、もしかしてそれって彼女が出来たからとか云うのは関係あるんですかね?!」



「──あのさあ」


一向に引き下がらない二人に本気で殺意くらい覚えていそうな顔だ。

イケメンが本気で怒った時はこれくらい怖いんだな、っと他人行儀で見てしまう。顔が整っているのはやっぱり最強の武器になるんだ。




< 54 / 130 >

この作品をシェア

pagetop