君との想い出が風に乗って消えても(長編・旧)



 その一輪の花が咲いている間は、ほぼ毎日、秘密の場所に行っている。


 他の草花たちもきれいで好きだけど、その一輪の花はまた別の魅力があって僕はその一輪の花を見ると元気をもらえる。

 また明日も頑張るぞという気持ちになる。


 僕は今年もその一輪の花に会えることを楽しみにしながら秘密の場所へ向かっていた。


 春の穏やかでやさしい風。

 その風が春の香りを運んでくれる。

 僕は風が運んでくれる春の香りに包まれている。

 その香りに包まれていると、とても穏やかな気持ちになる。





「……着いた……」


 僕のとっておきの秘密の場所。


 今日もその美しさは健在。



「会えた……」



 今年も美しく咲いていた。



 一輪の花……。



 僕は、その一輪の花に歩み寄った。


「こんにちは。今年もきれいに咲いていてくれてありがとう」


 年に一度、数日間咲く一輪の花。


 僕は、その一輪の花に今年も出会えたことがとても嬉しかった。



 …………。


 ……あれ……?


 ……なぜだろう……。


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