忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~
忘れるための時間 始めるための時間

# 光side

「って言うか、俺らのことより唯と達也の事が聞きたい。連絡もよこさず何しとったん。って言うか、結婚って…」

「うん…ごめん。…な、まぁ…達也!達也が言って」
唯が歯切れの悪い返事をする。照れているのか両手で隠しているが顔は真っ赤だ。

「卒業して…俺…」
達也がポツリポツリと話し始めた。

予備校に行って何となくどこかの大学に入ろうと思っていた達也は何となく過ごす気力の無い毎日を過ごしていたらしい。
そんな達也に喝とやる気を与えたのが達也を追いかけるようにして東京に出てきた唯だった。唯は地元に居るのがいやでとりあえず東京へ出てレストランで働いていたそうだ。
唯に時には発破をかけられ、時には慰められ、励まされ…そうやってスポーツトレーナーという夢を見つけた達也は予備校をやめ、スポーツトレーナー専門学校に実家を頼らずアルバイトをしながら通ったそうだ。
そうやって二人過ごすうちに…

「唯の大切さに気づいた、俺。唯には頭があがらんけぇ」
達也が頭をかきながら言う。

「まぁ、私の粘り勝ち、ってとこかな!」
唯が自慢げに言う。

(…でも、達也はまだ未来の事が…)
幸せそうな二人だか、この前話した達也の言葉か胸に引っ掛かる。
『今でも未来ちゃんの事は…ホンマにマジで大切な存在ではあるな。俺にとって。』達也はそう言って遠い目をしていた。

そんな俺の気持ちを見透かしたように
「未来ちゃんは今でも大切な存在じゃで、俺ら二人にとって!」
力強く達也が言い唯が隣でうなずく。

その言葉でそれまで涙を浮かべながらも泣くのを我慢していた未来がポロポロ涙をこぼし始めた。

俺はあわててハンカチを差し出す。

「うっうっ…ありがとう。昨日借りたハンカチもまだ返せて無いのに…うっうっ」

泣き止まない未来にオロオロする俺を二人して笑っていた。

思いもよらない出来事だったが、これで本当に安心して未来と結婚できるな…と心の隅で考えていた…。
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