忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~

#未来side

# 未来side

胸がドキドキして目を閉じるが眠ることはできなかった。
倒れてしまったことに驚き、みんなに迷惑と心配をかけてしまったことを心苦しく思った。
そして…(何で?何で永井君が?永井君が運んでくれた?)

倒れた時のことを思い出そうとしても思い出せず悶々としていた。気がついたらベッドの上で…永井君が心配そうに「先生、後藤さんは…!後藤さんは大丈夫なんでしょうか?」そう養護の先生につめよっていた。

その後…心配そうに…おでこに手を…

思い出すと顔が赤くなる。

そんなことを考えているとき扉が勢いよく開いてシャッとカーテンが開けられた。
泣きそうな亜紀と不安そうな唯の顔が見えた。

「心配かけてごめん…」

「心配したわ!ホンマに!」布団の上から胸のあたりを叩き亜紀が涙をこぼしながら言う。

「大丈夫なん?」
唯が頭を撫でながら声を掛けてくれる。

「うん…こんなん初めてじゃから、ちょっと自分でもびっくりした…」

うんうんとうなずきながら話を聞いていた唯だったが、口をきゅっと結び、永井君の方を向いた。

「光!…ちょっと…」
そう言いながら永井君の腕を引っ張り保健室から出て行ってしまった。

その姿を見て胸が痛んだ。

(唯は…永井君がうちを運んでくれたことが引っ掛かっとるんかもしれん…)不安になった。

「今日はもう帰る?」

「うん、お母さんが迎えに来てくれるって…」

「そっかぁ…でも、偶然 永井が遅刻しとって良かったな。教室に現れた時にはびっくりしたけど、力持ちじゃし軽々みぃーを運んでくれたんで。」
亜紀が思い出したように言う。

「…やっぱり永井君が運んでくれたん?うち、覚えて無くて…」

「うん!ちょっとかっこえかったわ~永井の株が上がったなぁ、1組で」
亜紀がちょっとふざけたように言うから思わず笑ってしまった。

亜紀を見上げると、ふっと真剣な表情にもどり私を見つめてため息をつく。

「心配、かけとるよね…でも、もぉ少しだけ、もぉ少しだけ待ってくれる?いつか話すけん。ちゃんと…」

目を見ながらまっすぐに言うと亜紀は微笑みながらうなずき「うん、待っとる。」と優しく言ってくれた。

自分の気持ちはもう痛いくらいわかっている。
ただ…周りの人の気持ちは本当にはわからんから…
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