忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~

# 未来side

# 未来side

教室に入る寸前に亜紀が抱きついてきた。

「みぃ~。えーん。寂しい~」
私を抱き締めながらホントに泣きそうになる亜紀。そんな私たち二人の姿を見てクスクス笑いながら教室に入ってくる新しいクラスメイト達。

「亜紀~うちも寂しいよ。でも、ちょっちょっと…」

「何よ~みぃはうちと離れて寂しくないん?!」亜紀がちょっとすねたように言う。

その時私にしがみついていた亜紀がグッと引き離された。

「泣くなや~クラス隣じゃし。皆に見られて後藤さんが恥ずかしい思いしょうるで」
永井くんが見かねて亜紀の襟元を引っ張って引き離してくれたのだ。

「あっ!この!永井め!お前はみぃと離れて何とも思わんのかい!!」
亜紀が詰め寄る。

(もぉ!亜紀ったら~ 何てこと聞くの)顔が赤くなるのを感じた。

「あっ、あぁ。俺も同じクラスが良かったなぁ…。でも、隣じゃけん!教科書とか貸してな」
永井くんが思いがけないセリフと柔らかい笑顔をくれた。
もう胸がドキッとひっくり返ったかと思うくらい音をたてた。聞こえちゃったかなぁ。

そして、ホントに嬉しくて。
胸が高鳴りすぎて返事はできず。それでも精一杯の笑顔で永井くんを見上げる。

永井くんも微笑み返してくれ、永井くんの右手が伸びてきて、そっと私の髪の毛に触れた…その時

パシッ

達也くんが永井くんの手を握って引き寄せたから一瞬触れた髪の毛が少し跳ね上がった。

「俺も隣のクラスなの忘れんでよ!ハハハッ」
「うちもな!」唯が永井くんと私を遮るように間に入り永井くんの顔を覗き込んでそう言う。 

「うっせぇなぁ~お前ら。クスクス」
さっき私の髪の毛に触れかけたその指で唯のおでこを軽く突いた。

胸がギュッとなる。

その時予鈴が鳴り響いた。
あっ と思った瞬間、亜紀がまたギュッと抱きついてきて耳元で「『俺も同じクラスが良かったなぁ』だって!」と、囁いた。

パアッと、また顔が赤くなる。

「じゃあね!」
手を振りながら亜紀と永井くんが手前の教室に入っていってしまった。
教室に入るその一瞬こちらを振り向いた永井くんと目が合った気がした。

ドキッ

心臓が忙しい新年度の朝だった。
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