忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~
三年生はこの夏大で引退だ。こんな形で引退を迎えることになり複雑なラストミーティングになった。

部室を出た時にはもう夕方6時を過ぎていた。遅くなるかなとも思ったが、きっと心配しているだろうから、うずくまっていた後藤さんの姿を思い浮かべながら考えた。

ポケットから携帯を取り出し電話をかけた。

「…はい。」不安そうな声で後藤さんが電話に出た。電話で話をするのははじめてで、面と向かって話をするよりうんと緊張したが、何とか約束をして後藤さんの家の近くの駅で待ち合わせる事にした。




駅に着き、駐輪場の近くにポツンと立って待っている後藤さんを見つけ駆け寄る。

「お待たせ。少しは落ち着いた?」

「うん。でも、心配で…目の近くにボールが当たったみたいで…。」
弱々しい声でそう言う後藤さんがまた泣いてしまいそうで思わずぐっと肩を抱き寄せてしまった。

後藤さんは驚いて俺の顔を見上げる。
安心させるように少し笑って見せる。

「達也の事じゃからきっと大丈夫!『会いに来てくれたん?!』って喜ぶできっと。さっ、遅くなるけぇ行こっか。」
そのまま肩を抱くような感じてバス停まで歩いた。
病院まではバスで行く事にした。
< 67 / 108 >

この作品をシェア

pagetop