冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


『ご一緒に出席してもよろしいのですか?』

『君だからこそ頼んでいるんだ。新たな妃候補は必要ないから、それを知らせるためにも良い機会だしな』


女性の存在をアピールして政略結婚の申し込みを断るという一種の戦略らしい。虫よけとしての責務を果たせと言われれば納得がいくが、陛下は“仲良くしている令嬢”という曖昧なスタンスで紹介しようと構えている。

確かに、見定め期間が延長されただけで婚約者でも恋人でもない。ふたりの関係はなんと呼べばよいのだろう?利害が一致しているビジネスパートナー?かりそめの妻と名乗るのもおこがましい。


そして当日。

身にまとう青いドレスは、陛下がわざわざ取り寄せてくれたものだ。レースデザインながらも肌が透けない生地を合わせてあり、肩から背中にかけて残る火傷が露出しないように配慮してくれたらしい。


「気負いしなくて大丈夫。君は俺の隣で楽しんでくれればいい」


会場までエスコートする彼は、いつもの微笑を浮かべている。白のシャツに貴族らしいロココ調のジャケットを羽織る姿は普段の数倍麗しく、横に並ぶのがためらわれるほどだ。

まさか、城に帰ってきて早々こんなイベントがあるなんて思わなかった。パーティーは不慣れだが、今は見定め期間。表立って口にしないものの、ビジネス王妃としてどこまで使えるかを試すという裏の目的があるのかもしれない。

なんとか役に立たなければ。

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