ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
言葉が足りなくてすれ違っていたことを反省したのか、思ったことをポンポン口に出すのだけど。
……恥ずかしくって、やめてほしい。

「……もう!
ずっとこんなんじゃ、お祝い出来ないじゃない!
ほら、出来たから食べるよ?」

ここで“待て”をしておかないと全ての計画が無駄になる。

私だってイチャイチャするのが嫌いではないの。
むしろ好き。
でも、段取りってものがあるのよ。
そこは合わせてもらわないと。

一緒に住み出して彬良は色々な顔を見せるようになった。
甘えた顔、拗ねた顔、余裕なさげに私を見下ろす顔。
その全てが私だけのもの。
誰にも見せたことのない、私だけの顔なの。
それが嬉しい。愛おしい。
自分がこんなに独占欲の強い人間だと思わなかった。

「フフフ…彬良、だーい好き!」

「灯里! やっぱり先にベッド…」

「それはダメ。
……髪は洗ってあげるから。
食べるよ。」

あーあ、パタパタ振ってる尻尾が見えるよ。

結局、私も甘いんだ。
新婚なんだもの。
いいよね?

それに今日は誕生日なんだもん。

「はい。彬良、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう。」

キリッとよく冷えた白ワインで乾杯だ。



< 152 / 158 >

この作品をシェア

pagetop