ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
ふと、この『食べてしまいたい』について考えることがある。
今俺が思ったのは、
美味しそうに食べている灯里が可愛くて、
舐め回したい、とか、灯里を齧りたい、と言った感情からの『食べてしまいたい』だ。
この使い方は正しいと思う。

しかし、一般的に言われる
『いい女だな。食っちまいたい。』
とか
『あの子、アイツに食われたらしいぞ。』
なんて言う時の“食う”は、本当の意味での
“食う”なのだろうか……。

初めて灯里と結ばれた夜は、正直ハジメテだったから、事を終えるのに必死で、何も考える余裕はなかった。

しかし、何度か身体を重ねていると、ふと思ったのだ。
これ、俺の方が食われてないか⁇…と。

いや、正しくは、俺の“分身”が食われているんだけど。

一度、あのバカ兄にでも聞いてみようか。
案外、同意を得るかもしれない。

いやそれはさておき、俺は食われることに何の
異論もないんだけど。
むしろ食われたい。何度も。
もちろん、今日だって…………

「…ら?…彬良?
さっきから難しい顔してどうしたの⁇」

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