ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「もちろん!
俺も一緒に行っていい?
灯里ちゃん、おごるからさぁ。」

お、やった!
奢りだ〜。焼肉いつ行こう?
バイトないときにしてほしいなぁ…。
私の休みは月木だから……

「…おい。勝手に話を進めるな…」

「なんだよ。お前も行くか?
仕方ない。連れてってやろう。」

「……」

なんだ。彬良も行きたかったのか。
不機嫌になるから何かと思ったら…。

「灯里ちゃん、麗に連絡させるから。
日程決めといて。」

「はい!LINEします〜。」

「じゃあ! 邪魔したな……文字通り。」

ニヤっと笑って、去っていった。

あぁ、見られたんだった…。
これ、絶対麗先生にも話、いくよね?
あー、明日のランチ捕まりそう…。


「麗さんとずいぶん仲良いんだな。」

「うん。そうなのー。
同年代の女医さんがいなくて、麗先生もここへ来てから寂しくされてて。
食堂で、私が声かけたの。
ほぼ毎日ランチしてるよ。
あ、でも、しばらくは悪阻が酷かったからね。
ランチ出来ない日もあったんだけど。」

あ、私たち2人の外見を頭の中で比べてるな、
コイツ。

「麗先生は確かにモデルさんみたいだけど、
私だって『灯里ちゃん可愛い!』って、麗先生言ってくれるんだからねー。
…多分、キャラクター的なものだろうけど…。」

「くノ一キャラか?」

「もう!それは言わないっ!」

「…にんにん」

「彬良!」

からかいやがって〜!






この時の私は、
何か引っかかることがあったはずなのに、
すっかり抜け落ちてしまっていた……








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