ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「お里ちゃん?あちらのお客様、オーストラリアからお越しよ。お願いね。」

オーナーに肩を叩かれる。

あぁぁ〜〜

そうだよ。
私、海外からのお殿様担当じゃん!
ハァ……腹を括るしかないか………。


「お帰りなさいませでござる〜!
お殿様方、奥方様、小さなお殿様!」

ここまでは定番なので日本語で。
この後からは、それぞれのお国の言葉で。

流暢に喋りだすくノ一に、興味津々の海外からのお殿様方。
一方で、楽しくご歓談中だったのに、黙り込んだ日本のお殿様。
相変わらず綺麗な顔を固まらせ、目だけどんどん見開いていく。

「……………くノ一“お里”?」

あ、バレたな…。

本名、“灯里”から取った、源氏名“お里”。
その結びつきに、コイツなら速攻で気付くだろう。

無視だ、無視。

英語でメニューの説明をし、オススメの
『天守閣オムライス』4つ、ドリンクセットで承る。
さあ、逃げるぞっ!

「ちょっと待て、そこのくノ一!」

ぎゃっ!

見逃してっ!

「……と、殿、なんでござるか?」

「……お前……ここで何してる…⁉︎」

見たらわかるでしょ!
くノ一だよ。く、の、い、ち!

「……殿、海外からのお殿様方がお待ちでござる。お話は後ほど……にんにん…」

「にんにん…」

呆然とするお殿様を無視し、逃げ去る。

あぁ、詰んだ……
このまま、無罪放免とはいかないだろうなぁ。

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