ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「彬良(あきら)!」

「……お前…。
何やってんだよ!そんな格好しやがって!」

「見てたでしょ?くノ一だよ。
顔隠してるのに、よく分かったね〜。」

「わからない方がおかしいだろ?
……いつからだ。
いつからバイトしてるんだ⁉︎
親父はこのこと知ってるのか⁉︎」

馬鹿なの?

「知ってるわけないじゃない。
あ、言わないでよっ⁉︎
院長先生には心配かけたくないんだからね。」

そう。
コイツは私のボス、廣澤院長の次男。
廣澤彬良だ。
昔から父親同士の関係で、父の大学の集まりなんかで、何度か会った事があった。
驚いたのは高校に入学した時。
同じクラスの後ろの席にコイツがいたのだ。
以来、大学も学部は違うけれど同じで、
腐れ縁のような関係になっている。

「心配かけるって自覚はあるんだな。
だったら今すぐ辞めろ!
院長秘書がくノ一⁉︎
なんの冗談だよっ!」

「無理なこと言わないでよ。
“お里”はこれでも売れっ子なの。
それにやっと見つけた好条件のバイトなのよ?
辞めるわけないじゃない!」

「…お里……。」

ん?彬良⁇ 彬良⁇

「おーい。戻ってきて〜!
意識どっか行ってるよ?
あ、オーストラリアのお殿様達は?
アテンドしなくていいの?」

< 9 / 158 >

この作品をシェア

pagetop