チヤホヤされてますが童貞です
それから数分後、

《コンコン》

と、ノック音が響く。すぐに入室の許可を綾斗は出した。

「……どうぞ…」
「お邪魔しま〜す」

呑気に入ってくる凛は、狼の前を鼻唄歌って横切る羊さながら。

「…何する? ゲームとか?」

平然を装って問う。あたかも何も気にしていませんよ、自分は善良な人間ですよ、と。培ってきた演技力を発揮しつつ、凛の返答を待っていると…

「…今夜は綾斗に気持ち良いことしようと思って……」

「………」

築いた理性の壊れる音が体内で鳴り響いた。



「綾斗、ここ気持ちぃ?」
「うん…。」
「硬い……」
「っ……」

今、綾斗が凛にされていること、それは…。

(どうせこんなことだろうと思ってましたとも……)

「肩こりすぎ!揉み解さないと頭痛くなるよ?」

マッサージ。
うつ伏せになった綾斗の方から背中、腰まで揉み解している最中である。

「友達が整体師で、やり方教えてくれたから綾斗で実践してみようって思って!」

(俺の緊張と焦りと赤飯を作る決意を返してください…)

などと内心思ってはいるが、揉まれた場所からじんわり広がる温かさと心地よさに酔いしれて、完全に脱力状態に誘われた綾斗。
凛は綾斗の気持ち良さそうな表情にやり甲斐を感じて楽しそうにしていた。

「綾斗、次は仰向け!」
「……それはやだ。」
「えっ…なんで?」
「………察して…」

理由はただ一つ。
やましい気持ちの象徴である立ち上がったソコを見られたくないから、なのだが…。

「……もしかして演技…? 気持ち良さそうにしてたけど実際は嫌だった?」

しゅん、と悲しそうにするものだから、居た堪れなくなって…

「……ごめん…。俺の理性が限界に達しそうだから…」

正直な気持ちを吐露してしまった。

「理性……?」

凛は綾斗の発言を聞いた途端に俯く。

「……今だって…キスしたくて…どうしようもないんだけど…」
「別に…いいよ…?」
「………って言うと思ったから敢えて我慢する…。」

歯止めが効かなくなってからでは遅い。
負担が大きいのは自分よりも凛だからこそ、彼女と自分が納得のいく日に肌を重ねて愛し合いたい。

「……後悔したくないじゃん。お互い初めてなんだし。」
「そう言って一生しなそう。」
「っ…じゃあ…次…オフが重なる前日の夜は…?」

自分だって大人だし、そういうことしたい年頃だし。綾斗が頭の中で色んな根拠を並べて問いかけた質問に、ゆっくりと凛は頷いた。
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