レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
1・侍女見習い・イライザ
「――見てみて,ポール兄さん!わたし,お城で侍女(じじょ)見習いとして働けることになったの!これが通知よ!」
春のある日,わたし――イライザ・バルディは,ご近所のルーザー家の玄関ドアを(いきお)いよく開け,(さけ)んだ。ポール兄さんはわたしの九つ(とし)上の幼なじみで,わたしにとっては実の兄のような存在だ。
「そうか!よかったなあ,イライザ。頑張れ」
「うん!」
わたしが手渡した通知の手紙に目を通したポール兄さんが,一緒に喜んでくれた。
兄さんは一足(ひとあし)先に,お城で兵士として働いている。実家に帰ってきていたのは,今日がたまたま非番(ひばん)だったからで,いつもはお城の敷地内の宿舎で生活しているのだ。
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