レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
「……そうよね。きっと偶然ね」
アリサはどうにか納得してくれたけれど,それでも渋々という感じだった。
自分でも,もしかしたら偶然じゃないのかもとは思っている。それを認めたくなくて,偶然だと思い込もうとしているだけなのかもしれない。
この話題は,この日はこれで終わったけれど。数日後,思いもよらない展開がわたしを待っていた――。

****

それから数日間,わたしは毎夜(まいよ)レオン様と中庭の四阿で語らっていた。
レオン様は本気か冗談(じょうだん)か,わたしに惹かれていらっしゃるらしい。そして,そんな彼にわたしが惹かれるのも必然だったのだろう。
そんなわけで,わたしとレオン様は恋仲になっていたのだけれど……。
ある朝,女官長ナタリア様からわたしにもたらされたのは,とんでもない(しら)せだった。
< 40 / 59 >

この作品をシェア

pagetop