生贄の花嫁 〜Lost girl〜

「あれ……俺たちは一体何を…？」

「体が……消滅していない……。」



「アナタたちと黒鬼院の契約は解いたわ。今は新たにアタシたちと契約を結んだのよ。」



「花月……もう目を開けていいぞ。」



劉磨さんに言われ少しずつ目を開ける。



「劉磨さん……その傷……。」

「ちょっと怪我しちまったけどあいつを倒したよ。」
「劉磨さん！」
「うわ！」


感動のあまり劉磨さんに抱き着いてしまった。生きていてくれてよかった……。


「これで全部終わったのか……。」

「いやまだだ。まだ、柚が残ってる。」


皆に連れられ柚さんの元へと行く。たくさんの傷は目を抑えたくなるほどひどいものだった。


「み…んな…。」

「柚、今、泰揮が助けてくれるからな。」
「……無理よ。」

「え……？」


「柚ちゃんはアタシたちみたいな完全な吸血鬼じゃない。いくらアタシの力を使っても回復することはできない。」

「じゃあ、俺らの血を分けて……。」

「それも無理でしょう。今の彼女に私たちの血を分ければ以前以上の苦しみと痛みを柚さんに与えることになります。」


「じゃあ……俺らは柚を助けられないのか！？また、俺らは柚を失わなきゃいけないのか！？」

「仕方がありません。彼女に使える万能な血などありませんから。」


「そんな……。」


「早く楽にしてやることが……一番いいんだな。」


「待って……だったら私の血を使ってください。」

「花月、何言ってるの！？」

「私の血なら吸血鬼のDNAもほとんど入っていないから使えるんじゃないですか……？」

「自分が言ってること分かっているの！？そりゃ、花月の血には僕たちが血を吸ったときに注入したわずかなDNAしか入っていないけど、それって花月も死んじゃうかもしれないんだよ？」

「でも……皆の悲しい顔見たくないから。それに……私も柚さんを失いたくない。だから私の血を分けてください。」


「本当にいいのですか…？死ぬ恐れもあります。」

「いいんです。さあ、早く柚さんに私の血を……。」





「柚ちゃん、聞こえる？これから花月チャンの血をアナタの口から流し込むわ。正直うまくいくかなんてわからない……もしかしたら柚ちゃんをまた苦しめることになるかもしれない。それでも……やってもいい？」

「うん……。」



柚さんが瞳から涙を零す。もうすぐ楽にしてあげますから……


「これ、使え。」
「これは…？」


「前にお前に渡したロザリオの対となる短刀だ。この剣には傷の治りをわざと遅らせる能力を込めてある。お前が限界だと思うときまで傷は塞がらない。」



自分の中で覚悟を決める。手を柚さんの口元に持っていき私は静かに手首を切っていった。
滴っていく血は指を伝い柚さんの口の中へ入っていく。