生贄の花嫁      〜Lost girl〜
あれから自分の部屋に入り2人の会話を思い出す。

『もう死人を出したくない』ってことは私が来る前、きっと何かがあったってことだよね。

劉磨さんが口にしていた柚さん…以前ここにいた女性の名前だと思う。抱きつくだなんて…きっとそれほどまでに仲が良かったんだ。

いきなり抱きつかれたのは驚いた。でも、1番気になるのは彼の言葉…


≪どこ行ってたんだよ。探したんだぞ…。≫


ここに来た女性は命を落としてしまったと悠夜さんが言っていた。きっと、彼女も……だから探していたという言葉が引っ掛かった。


コンコンッ

「はい!」
「私です。先ほど渡し忘れた教科書と鞄を届けに来ました。」
「いま、開けます。」

ガチャ

「わざわざ届けていただいてありがとうございます。」
「貴女が私を気遣う必要はありません。」

「はい…。」

悠夜さんから教科書と鞄を受け取る。


そうだ…もしかしたら悠夜さんなら何か知っているかもしれない…柚さんについて。

「あの、悠夜さん…!」
「何ですか?」
「私が来る前にここにいた柚さん…どんな方なんですか?」
「え…?」

彼が顔をしかめた。聞いてはいけないことだったのだろうか。

「誰から聞きましたか?その名前…。」

みるみるうちに彼の目つきが鋭くなっていく。

「さっき、劉磨さんに柚と呼ばれて…もしかしたら前にここにいた人と私を間違えたのではないかと…それで。」
「そうですか…貴女は知らなくていいことですよ。では荷物はお渡ししましたので私は戻ります。」

そういって悠夜さんは部屋を出て行ってしまった。でも、これで確信した。何かあったんだ…私が来る前に。柚さんに関する何かが…
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「あら、悠夜、こんなトコロにいたの?そんな渋い顔して何かあった?」

「彼女が、劉磨から柚のことを聞いたみたいです。」
「え、柚って、柚ちゃんのこと…?」

「大丈夫だとは思いますけど彼女も何か感づいたようです。この屋敷で起きたことについて…こんなに早く気づかれるとは思いませんでしたが…柚の存在について。」

「花月チャンの記憶消さなかったの?」
「消そうとしたのですがなぜか力が安定しなかったんです。」

「もう…あんなこと起きないわよね…?2年前の柚ちゃんの時みたいな…。」

「泰揮、黙りなさい。もし彼女に聞かれていたら大変なことになります。もう柚のことについては触れないようにしなくては…特に彼女の前では…。」
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