生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「で、どうするよ。水瀬たちは停学、下手すりゃ退学だけどよ、朱鷺院楓はどうする?」



「退学処分にしてもらって構わんよ。」

「誰……?」


「お父様……。」

「お父様…?ということは……理事長…?」

「いかにも。儂がこの学園の理事長の朱鷺院銀次郎じゃ。この度は娘がご迷惑をおかけしました。責任をもって水瀬結愛、水瀬あずさと共に退学処分に致します。」

「……。」


「じゃから、この件はどうかご内密に……」
「お断りします。貴方からは親としての責任を感じません。貴方が彼女たちを退学処分にするのは親としての愛情や理事長としての責任ではない。むしろ、責任逃れのためのように感じ取れます。まるで最初からなかったことかのようにするために…。退学にして家に閉じ込めるよりも、学校に通い人間関係を育んだ方が彼女たちのためになります。」


「じゃが、上手くいくわけがなかろう。吸血鬼たちがいる中で弱い立場の生き物だと悟られれば命取りになる。」

「だからこそ、どのように生きていくのかを本人が考え、学ぶかが大切なのではないですか…?罪を隠して生きていくよりも、罪を認めたうえで新しい道を歩めばいい。14歳と若いのであれば尚更。」


「ふむ……君は面白いことを言うねえ…。たとえどんな罪人でも悔い改めれば人生をやり直すことができると…やり直していいと本当に思うのかね…?」


「やり直すことができるかどうかは私には分かりかねます。ですが、1度学んだからこそ同じ過ちは犯さない。判断を誤った分岐点に戻ればいい……違った道を歩みなおせばいい……そう思います。」

「……そうかい。では、1つ賭けてみようかのう。本当に彼女たちがやり直せるのかどうか。」


「分かりました。その代わり、彼女たちの退学処分を取り消し、今回のことを全て不問としてください。必要なのは貴方からの形だけの罰よりも彼女たちが自分で考えどのように罪の意識を捉えるかです。」


「威勢のいい目じゃ。それなら好きなようにすればよい。楓…この娘の側でしばらく生活をしなさい。」

「お父様……。」
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