生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―奏side—

花月がモデルやるって言って聖もついて行ったから何か起こるとは思ったけど、こんなにぎこちない感じで帰ってこないでよね……。何があったのかバレバレだよ。

「花月に何したの?」
「…な、なにも……。」

「メイド服の花月を見たくて一緒にモデルをやった。可愛かったけど言葉が出てこず逆に花月に褒められて嬉しかった。そしてついデートに誘ってしまった。おそらく文化祭で一緒に周るとかだろうけど。」
「!!」


「当たり…か。何青春してんだか……。まあ、僕たちの手間が省けるのは有難いけどね。」
「…手間…?」

「いや、こっちの話だから気にしないで。それで、花月は何だって?」

「…いいよって…言ってくれた。」

「はあ……別に文化祭でデートしようがくっつこうが2人が何しようが僕の知ったことじゃないけどさー、恋愛するっていうならそれだけの覚悟があるって思っていいの?国王継承者候補である僕たちと恋愛するってことは只の楽しいだけの恋愛じゃないんだよ。花月のすべてを世に曝け出すことになって、今よりも守ることが必要になって……花月を危険な目に遭わせるかもしれないんだよ。」


「…俺は何があっても…あいつを守る。それはあいつと出会ったときに決めたことで譲る気はねえ。俺は…花月だけは絶対に諦めたくない。ずっと側にいたいんだ。俺の手で…幸せにしたいんだ。」



今までに見たことの無いくらい聖の目に熱がこもっている。それだけ花月に本気だってことか……。


「そんなに生き生きとした目をしている聖を見たのは初めてだね。聖の主張はとりあえず受け止めといてあげる。デートのことは聞かなかったことにする。でも……僕は応援もフォローもしない。花月が欲しいなら聖が自分の全てを賭けて自分の力で手に入れろ。劉磨や悠夜たちを蹴落としてでも自分で掴め。花月との未来を。」

「…ああ。」




恋愛から逃げた僕が何を言っているんだろう……。こんな信憑性のない啖呵を切ったって聖が諦めることなんかないのに……。



「そろそろ教室に戻るよ。あんまり遅くなると花月が不安がる。」

「…奏、ありがとな。」
< 200 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop