生贄の花嫁      〜Lost girl〜
今日は、嬉しいことがいっぱいだな。こういう日って1日の終わり際が怖いっていうけれどね。


ブブッ


私がスマートフォンを持つようになってから、毎日楓ちゃんからのメールが来る。クラスのこと、友達ができたこと、ありがとうっていえたこと。1つ1つは小さなことなのかもしれないけれど、彼女の成長が見られて嬉しくなる。




「はーい、号令。」

「起立!礼!着席。」



「今日は微分と積分についての勉強をします。必ず板書をとって身に付けてください。」



吸血鬼になったことで1人でも授業を受けてもいいという許しが出たのはいいのだけれど、空いていた枠が数学の応用クラス。内容の難しさとかは問題ではないけれど知り合いがいないため黙々と黒板とノートに文字を書くだけで少し寂しさも感じる。


「あの、すみません。」
「はい…?」

「教科書忘れちゃって……見せてもらってもいいですか…?」

「はい、どうぞ。」

「あの、僕、青峰涼(あおみねりょう)っていいます。白梨さんは、最近このクラスに入ってきたんですよね…?何か分からないこととかあったら言ってください。僕にできることなら、何でもしますので。」



か細い声が特徴的な青峰くんは今までにあったことのない雰囲気の男の子だったけれど、理系科目が得意なようで、授業が終わってからも話が弾んでしまった。



「僕…数学と理科しかできなくて……白梨さんはたしか学年上位の成績でしたよね…?あの桃瀬くんと1位2位を争ってましたし…。」



そういえば、そんなこともあったっけ。あの時は、まだ来て間もないころでドキドキの連続だったな。



「そ、それでですね…その……大変申し訳ないのですが…その……お時間あるときにでもいいので、語学の勉強を教えてもらえないでしょうか…?」

「語学ってことは国語と英語ってこと…?」


「はい…後、できたら他の外国語もお願いできたらと……。」


「外国語か……フランス語、ドイツ語、イタリア語、中国語、韓国語辺りならできるけど……。」

「フランス語をお願いできますか…?僕、絵描くのも好きで、フランスの留学考えていて、どうやって勉強しようか困っていたんです。」


「もちろん!あ、そうだ、連絡先交換する?」
「は、はい!」


「何か困ったことがあったらいつでも連絡してもらって大丈夫だから、留学のために頑張ろう!」

「はい!」


青峰くんは隣のクラスのようで、ドアのところで別れてしまった。

留学か……私にできることなら何でもしてあげたいな……。
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