生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「さー、午後も頑張ろう!」


ランチが終わり、午後のケーキ販売の準備をする私たち。午前と午後で売るケーキが違うって言ってたからなんだか楽しみだなー…!


「ねえ、あずさ。」
「なに?」

「いや、さっきからずっと気になってんだけどさ、あそこの電柱からこっちを見てる人がいるんだよね。ケーキを買いたくて見てんのかと思ったけどなんとなく花月ちゃんを見つめてる気がして……。店長に言っておいた方がいいかな……?」

「まあ、あそこにいる人女の人っぽいし、大丈夫だと思うけど……。」



さっきから結愛ちゃんとあずさちゃんがコソコソと何かを話している。

何の話をしているんだろう……?



「え、あの人こっちに来たよ、どうする…?」
「どうするって言われても……。」


「あの。」

「いらっしゃいませ。」

「いらっしゃいませ……か。随分変わったことしてんじゃん。」
「あの…えっと……。」


「花月、1回店に入ってな。ここはうちらが……。」

「あんたたち、水瀬結愛に水瀬あずさ……?花月とはどんな関係なの…?こいつら。」


あれ…?このお客様、今私の名前、呼んだ……?



「その顔は気づいてないって顔だな。私だよ。」



そう言って目の前の女性は帽子とサングラスを取った。そこにはあの時旅に出て行ってしまった彼女がいた。



「もしかして…柚さんですか…?」

「正解。お嬢様のあなたがアルバイトなんてどんな風の吹き回し…?って、なんか前と雰囲気変わった……?」

「それはまあ…色々ありまして……実は吸血鬼になったんです。」

「……そっかあ、おめでとう。屋敷の方に帰ったら皆にも伝えとくよ、花月がバイト頑張ってるって。」

「あの……それが…。」







「あなたもしかして……皆に内緒でやってるの…?それともそこの水瀬姉妹にやらされてるの?」

「たしかに、皆には内緒でやってます……。でも、結愛ちゃんとあずさちゃんは私のお友達で、アルバイトしないかって誘ってくれたんです。」

「そう……ねえ、水瀬さん。」

「何ですか…?」

「そんな怖い顔しないでよ。別に仕返しするとかじゃないんだから。」



し、仕返し……?柚さんと結愛ちゃんたちっていったいどんな関係なの……?



「ねえ、私も働かせてくれない?なんか人手足りなくて困ってそうだし。」
「別にそれはいいけど…何企んでる気…?」

「何も企んでなんて無いよ。花月を見守りたいからってだけ。本当はさ、24日に屋敷に行く予定だったんだけど、思ったより早くこっち帰ってきちゃって、暇だから街を歩いていたら花月を見つけたわけ。でも花月がアルバイトしているところなんて初めて見たし、なんかあったら困ると思って向こうの方でずっと見てた。まあ、水瀬さんたちにはストーカーとか不審者の目で見られていたみたいだけど。」


「柚さんにも入ってもらおうよ!」

「まあ…花月ちゃんがいうなら……。」

「じゃあ決定だね。水瀬さんたちもよろしくね。」
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