生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「うわぁ…すごくきれい。あのクラゲは聖さんみたい。あのサメなんか劉磨さんそっくり。」
「もう!僕といるのに他の男の名前なんか出さないでよ。」


「ごめんなさい…桃瀬さんの顔フグみたいになってますよ。」
「フグ!?なんで?」

「怒って頬っぺた膨らませてるからです。あ、イルカショー……。」
「見たいの?」

「うん……あ、でも外だから日が当たるかも……それに水も飛んできそうだし…。」
「いいよ、行こ!」
「でも体が…。」

「少しくらいなら大丈夫だよ。せっかく来たんだもん。思い出作っていこうよ。」

そのあとイルカショーが行われる広場へと向かった。でも正直不安だった。日光が苦手な吸血鬼がいくら夕方とはいえ大丈夫だろうか…


「もしかして僕のこと心配してくれてる?そんな心配、しなくても平気だよ。今日は快晴ってほどの天気じゃないし…もし辛かったらどうにかするからさ。」


そう言う彼の頬には僅かに汗が流れていた。

「もし何かあったらすぐ言ってくださいね。絶対無理しちゃだめです。」
「ありがとう。」

おでこにそっと柔らかい感覚。彼のキスはとても温かかった。
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「はーい!みなさんこんにちは~。今日はこの水族館のアイドル、イルカの海くんと花ちゃんが皆さんに素敵なショーをお見せします。最後まで楽しんでいってくださいね。それじゃあ海くん、花ちゃん準備はいいかな?」


キュ キュ と2頭のイルカが反応する。イルカショーは想像以上にきれいでとても楽しい。

「じゃあ海くん、大技行こう!これから海くんの得意な大ジャンプをお見せします。前のほうの席の方は濡れてしまうかもしれないのでご了承ください。」

私たちが座ってるのは1番前の席。案の定頭から水を被り、制服はずぶ濡れになってしまった。


「すごい濡れましたね、桃瀬さん大丈夫ですか?」
「なんとかね。こんなに水被る…なんて…」

私のほうを見る桃瀬さんの顔が徐々に赤くなっていく。やっぱり辛かったのかな…?


「僕のブレザー着て!」


目の前にブレザーを突き出され強制的に着させられることになった。服と肌がくっついて何とも気持ち悪い。

「皆さん、今日はイルカショーをご覧いただきありがとうございました。本日の演目は異常で終了となります。海くん、花ちゃん、皆さんにバイバイしてね~。」


「手、降っててかわいいですね。」
「花月のほうが十分かわいいよ…。」

「?」

「なんでもないよ~!」
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