生贄の花嫁      〜Lost girl〜
レトロな雰囲気の店に入りコーヒーを2つ頼む悠夜さん。

なんで喫茶店に寄ったんだろう…



「こちらの用は終わったのでここからは貴女の用です。」
「え…?」


「私はあの屋敷で最年長です。皆をまとめることが務めですがそれぞれの体調、立場を管理することも務めです。屋敷にいると言いづらいこともあるでしょう。」




もしかして私を慰めるために誘ってくれたのかな…?


「フフフ。」
「何を笑っているのですか?」

「いえ…優しいんだなと思って。」

「優しい…?そのようなこと初めていわれますよ。」


「この買い物も私のために誘ってくれたんですよね…?」
「いえ、手が必要だったからです。」


そう言ってコーヒーを飲む悠夜さんの目はとても穏やかで優しい。



「私、悠夜さんって怖い人だと思っていました。笑った顔はほとんど見たことがないですしいつも眉間に皺が寄っていて気を張っているように見えて…って、言いすぎですかね…?」


「いえ…貴女の言う通りですよ。私は柚の時のようなことがもう2度と起こってほしくないのです。失う怖さよりも悲しむ劉磨たちを見ることを避けたいのです。そのためには彼らが悲しまないように尽くし、常に見ていれば大事になる前に防ぐことができます。」

「辛くないのですか…?」


「私は…それよりも辛いことを知っています。大切な人の大切なものを奪う怖さを。」



大切な人の大切なものを奪う怖さ…それは私には理解できるものかわからないけれどこの人はきっと、とても重いものを背負っている。



「そんな顔をしないでください。私が自分で選んだ道です。後悔などしていませんので憐れむような顔をしないでください。」

「え…あ、ごめんなさい。皆さんはすごいですね…自分で自分の道を選べるだなんて…。私は自分で道を選ぶことはおろか、人の人生を奪ってしまう。自分が嫌になります。」




「誰も貴女のことを否定などしていませんよ。貴女はもっと自信を持つべきです。人の人生を奪っているのではなく人に人生の選択をさせることができる人なのですから。物は見方によってすべて変わります。物事を後ろ向きに考えてしまえばすべて黒く見えますが前向きに考えれば白い未来が見えます。そう考えると生きていることも楽しいでしょう…?」



前向きに考える。そうか…それが私が選ぶ道。



「さあ、そろそろ帰りますよ。あまり遅くなると泰揮が怒ります。」
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