生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―劉磨side—

花月が部屋に戻ってから重苦しい空気が流れる。


一体何があったんだ……。


「どういうことか…説明してもらえますか…?聖。」

「俺…花月を襲っちまった……。俺といると安心だって言われてショックで…気が付いたらベッドの上で…俺は花月に馬乗りをしていて花月は…怯えていた。」



は…?こいつが…花月を…襲った…?


「どういうことだよ、それ…。てめえ、ふざけんな。」


聖の胸ぐらをつかみ力いっぱい殴った。倒れ込む間もなくもう一度腕を振りかざす。


「一番無害そうな顔して何やってんだよ。いつもすかして俺たちを見下してたのかよ!?花月を傷つけるなんて絶対許さねえ。」

「俺だって…俺だって自分でもわからなかったんだよ。ただ一緒にいられれば…隣で話して笑ってくれてればよかったのに……俺は…俺は…どうしたらいいんだよ…。」



言い返す聖を俺は初めて見た。いつも黙って誰かの陰になっていて…謙虚な奴だと思っていた。


「大体、何でしょっちゅう花月を部屋にあげてたんだよ……ウイスキーボンボンの件だってそうだ。お前の不注意だろうが。」

「俺は…ただ側にいたくて…。」

「だから花月のことよりも自分の欲を優先したのか…。それで花月を傷つけると思わなかったのか!?」



そう言ったとき俺の体が後ろへ吹き飛んだ。



聖が…俺を殴った…?



「俺は…お前らみたいに女に慣れてない。扱いだって分からねえんだよ。」




「は~い、2人とも、喧嘩はそこまで。」




もう一発殴りそうになった時、泰揮が俺の動きを止めた。


「貴方たちは1度部屋に戻って頭を冷やしてきなさい。彼女のことはこちらで受け持ちます。」



正直、悠夜たちが止めてくれてよかった。でなきゃ俺は聖を殺すくらい殴っていたかもしれない。


「花月…このまま僕たちのこと嫌いになっちゃうのかな…?」

「今のままではそうでしょうね。」

「そうだ!悠夜の力で花月の記憶を消せば…。」

「それはダメよ…。消していい過去と消したい過去は違うもの。彼女の記憶を消しても聖クンの過ちは変わらないわ。」
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