生贄の花嫁      〜Lost girl〜
どこかで聖さんは安心できる人だと思っていた。どんな時も支えてくれて…側にいてくれて……。なのに…なんであんなことに……


私が悪かったのだろうか。私が無防備だったから……


「私…なんてことしちゃったんだろう…。」


急ぎたいのにゆっくりとしか階段を上がれない。体に力が入らない。


襲われたことはショックだったけれど、1番はそれじゃない。聖さんを…皆を拒んでしまったこと。せっかく家族になれたと思ったのに……


「花月ちゃん、待って!」

「琉生くん…?」



足を引きずりながらこちらに向かってくる琉生くん。



ダメ……今は怖くて見られない……


「花月ちゃん、僕に洋服貸してくれない…?」

「え…?」




私の部屋のクローゼットに琉生くんが入ること数十分。


琉生くん……なにをしているんだろう…?


「できた!」


クローゼットから出てきたのは琉生君の姿……ではなく人形のような長い金髪の女の子だった。



「あ、言葉も気をつけなきゃだよね…。私、ルイ。お人形と遊ぶのが大好きなの。」

「可愛い…って、そうじゃなくて、これ、どういうこと…?」


「女の子なら……怖くないでしょ。今日からはルイちゃんって呼んでね。」



たしかに嘘みたいにさっきより体の震えが止まった。



「あの…琉生くん。」

「くんじゃなくて、ちゃん。私は女の子なんだから。」

「ありがとう…ルイちゃん。」



「そっち、座ってもいい…?」



笑い方は琉生くんのままなのに、外見が違うだけで恐怖心がなくなる。近づかれても大丈夫。それに本当に女の子と話をしているみたい。



「私、お菓子が食べたいな。」

「お菓…子…。」



そういえば…聖さんはいつも私のために用意してくれていたな…。ブラウニー、タルトケーキ、スコーン。



それに紅茶も……





「おかきか饅頭、あとは羊羹なんかがいいな。お煎餅も食べたいし大福もいいね。」


「え、ちょ…ルイちゃんって和菓子好きなの!?」

「花月ちゃんが嫌じゃないなら何でもいいよ。あ、そうだ。お庭で食べましょ。」


ルイちゃんなりに私を励ましてくれているのかな…?慣れない女言葉まで使って……
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