隣のキケンな王子様!


「殴られたりしてねーよな?」


「……うん」


「痛いところとかは? 腕、本当に大丈夫なのか?」


「……うん」



「ありがとう」も「ごめんなさい」も言えないあたしを、郁己くんはこんなに心配してくれてるのに。


なんて……ふがいないんだろう、あたし。



「……無理にでも引き止めておけばよかったな」



視線を持ち上げると、悲しそうな、苦しそうな瞳とぶつかって。



「……ふぇ……」



胸の奥がきゅっとなって、熱くなったまぶたから、涙があふれた。



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