【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

道を分けたとすれば、確実にあの中学の時だ。菫がおじちゃんに言われた通りにエスカレーター式の女学校に入学して、離れた。

ずっと一緒だった幼馴染が、少しだけ遠い存在になったあの日。あの時菫が同じ学区内の公立中学に進んでいたらまた話は違っていたかもしれない。

「まあお前の気持ちが分からなくもない。幼馴染つーのも何だかんだ切ないもんだな」

俺は産まれた時から付き合いのある女の幼馴染が居た事がないから気持ちは分からんがな、と付け足して俊哉は眉毛を下げて切ない微笑みを落とした。


珍しく定時に仕事を終えた。今日はモデルの仕事やメディアの仕事も入ってはいない。

実家に帰ろうとも思ったけれど、明日は休日だ。ゆっくり帰れば良い。

ここ最近は平日でも毎日のように帰る俺を、母は少しだけ心配している。夜更け過ぎに車を運転して帰って来るのは不安らしい。

だから今日は都内の自宅へ久しぶりに帰ろうと思う。



同棲か、なんて考えながら帰路に着く。

港区にあるデザイナーズマンション。菫に言った通り一室余っている2LDKの物件だ。余ってる部屋は現在俺のデザイン関係の仕事部屋になっている。

デザイナーズマンションは近年高い人気を誇っているが、おしゃれな空間と引き換えに不便な所も多い。

例えばこのマンションだけで言うと、ベランダがない。たまには日光の下で洗濯物を干したくなる時もある。

そして気に入った箇所のひとつであったのだが、お風呂がガラス張りなのである。外国みたいでおしゃれじゃん、とも思ったが友達を呼ぶと結構不便な所もあるし、眉をひそめられる時もある。

後はなんせ収納が少ない。デザインの関係の仕事をしている人間にとって、これは見落としていた部分である。結果、物がごちゃごちゃとしており、片付いていない空間になってしまった。



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