新 不倫
「あ、ご主人。ちょっといいっすか?」
「はい。」
僕の隣で、さすがに場をわきまえていた長くんだったけど、
“ヒュー!”と踊り出すかのように平山さんに近づいていく。
「お顔、怪我してるんすか?」
「え・・・・。」
「あ、すんません、
余計な事気付いちゃって。
目の下ちょっと腫れてるんじゃないっすか?」
「・・・あぁこれは、
ちょっとぶつけただけです。」
「あれれ・・?
唇もちょっと切れてるっすね。
お大事になさってくださいっす。」
「・・・失礼します。」
よく気付いたな長くん・・って感心する間もなく、平山さんが部屋を出ていこうとする。
だから僕も、様々な憶測が頭を駆け巡りながらも反射的に声を発していた。
「あ、ご主人。」
「・・・・はい。」
「刑事課の星野と申します。
僕からも1点だけいいですか?」
「なんですか?」
「あなたはどうしていたんですか?」
「・・・・はい?」
「22時にご帰宅されて、
奥様がいない・・。」
「ですから同じ事を何度も言わせないでください。
出掛けていると思っ・・。」
「あ、いえ。そうではなくて。
僕が知りたいのは・・ご帰宅後、
あなたが何をしていたか・・です。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「特に何も・・。風呂に入って、夜飯を簡単に済ませて、すぐに寝ました。」
「それを証明できる人はいますか?」
「いるわけないでしょう?
家には俺一人だけだったんだから。」
「分かりました。ありがとうございます。」