新 不倫
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「平山さん。ここからはご相談です。
残念ながら、タイミング法・排卵誘発法で効果が得られなかったので、
第二段階として“人工授精”という選択肢があるのですが・・
この人工授精は一般的に、男性側に不妊の因子がある夫婦に適した治療になります。
ただ、以前の検査結果でもお伝えしたとおり、
旦那様の方には乏精子症、精子無力症、精路通過障害といった原因は見つからなかった為、
人工授精を飛ばして、最終段階の“体外受精”を受けて頂くほうがいいかもしれません。」
「「・・・・・・・・。」」
「ただ・・体外受精となると費用の方が今までと比べてお高くなってしまいます。
一度ご夫婦で相談・・・・。」
「先生。お金は惜しみません。
やらせてください。」
「・・・奥様も大丈夫でしょうか?」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・?」
「・・クミコ・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
“旦那さんに問題は無い”
それは、大きな間違いだった。
確かに俺の精子に異常は無かったのかもしれない。
“不妊治療に積極的に取り組む旦那”
として振る舞えていたかもしれない。
だけど・・“クミコの旦那”として・・この数ヶ月、本当に問題は無かっただろうか・・?
“大丈夫”、“頑張ろう”、“心配ない”
“その為の治療だよ”、“大丈夫”
“大丈夫”、“大丈夫”、“大丈夫”
俺が向き合っていたのは“不妊治療”で・・“それを受ける妻”の事・・
ちゃんと向き合えていただろうか・・?
先生の問いかけに何も答えられなかったクミコの肩を持って、
“ちゃんと話し合ってまた来ます”と返事を保留した。