熄えないで






「かいちょー!」



学校につき、校門をくぐってすぐのこと。
半人分の距離を開けて歩いていた私たちの後ろから、彼を呼ぶ声が聞こえた。



「蛍原(ほとはら)」

「かいちょーは今日も彼女と登校ですかぁ。いいですねぇ」



振り向いた先に居たのは彼の後輩――蛍原さんだった。彼女と私の間に直接的なかかわりはこれと言ってない。



「毎日冷やかしに来て飽きないの、おまえ」

「冷やかしじゃないですよぉ。かいちょーに用事があったから来たのー」



そう言った蛍原さんが横目で私を見る。どうやら今日も、私の隣から一刻も早く“かいちょー”を引き離したいらしい。


むしろその方が助かるから早く連れて行ってほしい、と、 これまた心の中で思う。




「文化祭近くて仕事たまってるんですよー?彼女とのんびり登校してる暇なんてないですっ」

「朝はいいだろ別に…。悪い、二千花」




彼女は初対面の時からずっと私のことを敵対視しているみたいなのだ。


申し訳なさそうに眉を下げた彼に「全然平気だよ」と短く返す。蛍原さんが勝ち誇ったように笑みを浮かべたのが分かった。



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