不眠姫と腹黒王子

円side:あの日




いつもと同じだった。

特に何も感じない日。
でも、あとから思い出したら唯一無二の一日。

私は重大なミスを犯した。


**

ジリリリ…

うるさい…


猛烈な眠気の中、そう思った。


4月22日。
確か火曜日だった。
ゴールデンウィーク明けのテストに向けて、
早々に準備していた頃。

前日遅くまで勉強していたから、
家を出るギリギリまで寝ていたかった。

それなのに

ジリリリリリ…

私の携帯ではないアラーム音が私の耳を刺した。


「うるさい…」

そう言っても、アラーム音は消える気配がない。

うるさいうるさい!!

この音…
絶対お母さんだ。


私の母親は仕事が忙しくて、
夜中に帰ってきては朝早く出る人だった。

その頃の私はそんな生活リズムを崩す人物を
疎ましく思っているほどだった。


「お母さん!」

返事はない。
イライラがさらに募っていく。


うるさい
うるさい
もっと寝かせてよ。
私は疲れてるんだ。


鳴りやまないアラームにしびれを切らし、
私は寝床から起き上がった。

アラームの音の元へ向かうと、それはリビングだった。


私はイライラしていた。


すごく些細なことに。
ほんの1時間早いアラームに。


私はリビングのソファで眠るお母さんに声をかけずに、そばのスマホを手に取り、アラームを切った。


お母さんは静かに

静かに
眠っていた。


イライラしていた私は、スマホを放り投げて自室に寝に戻った。



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