不眠姫と腹黒王子




「待ってたの?」

「え…。」


宮は少し沈黙すると、
「たしかに」
と小さく呟いた。


「先帰ればよかった。」

「…っぷっ」

「なに笑ってんだよ。」

「あははっ…
宮ってさ、優しいんだか腹黒なんだか、
よくわかんないよね。」

「…お前、笑うんだな。」

「は?
笑うに決まってんじゃん。人間だよ。」

「はいはい。
珍しいな、って意味だよ。」


宮はすぐにそっぽを向いてしまった。


「帰るぞ。」

「うん。」


久々に笑ったら疲れた。

でも、悪くない気分だ。


「明日は朝何時に来るの?」

「今日と一緒だよ。」

「そう。」


寂しいってわけじゃない。

ちょっとつまんないだけ。


だって、私は宮が嫌いじゃないもの。


「じゃあな。」


いつも別れる電車のホーム。

宮はまた当然のようにあいさつをした。


嫌いな人にも挨拶ってするものなの?

なんか宮ってズレてるよね。


思ったけど、言わなかった。


私たちはいつも通り、
名残惜しい素振りもなく、
あっさり一人の帰路に立った。



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