狼の愛したお姫様
唯一無二


遥side



───最初から気づいてた。




「だから皆、寝たフリしててよ。」


反対する奴もいた。
寝たフリするくらいなら、止めてしまえばいいと。


…でも。



「それは叶望の本意じゃない。」

どうせ脅されてるんだろう。
僕達に迷惑をかけないように、とでも考えているのかもしれない。




「…でも、必ず連れ戻す。」



向こうに渡すわけがない。

ただ、一度この手を離すだけ。




…一度だけだから。



< 176 / 213 >

この作品をシェア

pagetop