狼の愛したお姫様
確かに痛い。
痛くて痛くて、このまま意識も飛びそうなくらい。
だけど絶対、この男の思惑通りになんかならない。
「…いいこと思いついた。」
私の傷から手を離し、また怪しげに笑った。
「今日は一人で帰ってこい。わかったか?」
その言葉に声は出さず、静かに頷く。
抵抗したところで傷が増えるだけ。
それなら大人しく、言うことを聞いていればいい。
───なんて、この頃の私はそう甘く考えていた。