敵総長と未亡人は当然上手くいかない
Ⅰ.
その日、雨が降っていた。


シトシトと切ない私の心情を物語る様な優しい雨・・・。


私は雨が好きだ。


雨は色んなものを掻き消してくれるから。。


雨の日は決まって近所の川沿いを散歩する。


雨が次々と川に小さな波紋を作って、それを見ているのが楽しみだった。


あの小さな波紋が一つの大きな波紋になって、やがて何事もなかったかのように消えていき、また新たな波紋が出来ていく。


その連鎖の中に飲み込まれたならきっと気持ちいいに違いない。


こんな雨の中、傘もささずにそんなことを思う私の顔はきっと不気味な顔をしていることだろう。


それでも私は柵に手を掛け、上から川の波紋をしばらく眺めていた。


ふと、グレースケールの視界に、一筋の赤が流れていくのが見えた。





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