白球と最後の夏~クローバーの約束~
初夏の匂いが空気に漂いはじめた連休初日。
今日は、ココちゃんと手芸屋さんに出かける約束をしていた。
大型ショッピングモール。
駅で待ち合わせて、3駅行ったところの去年できたばかりの新しいモール。
「今年は大変そうだね、百合。1人で作って間に合うの?」
お目当ての手芸屋さんに向かいながら、ココちゃんが聞いてきた。
「ん〜、間に合わせなきゃ!だから今年は早め早めにやろうかと思って」
「そっかぁ。確か去年って、期末終わってからだったよね?」
「うん。先輩と2人で作ったよ、50個くらいだったかなぁ」
「そんなに?」
「うん。ほとんどわたしが作ったけど」
「あはっ、あの先輩、以外と不器用だったもんね」
「でも、すごく一生懸命で真っすぐな先輩だったよ。好きだったなぁ」
「そうだよね。ずいぶん仲良くしてもらったなぁ、あたしも」
「うん」
卒業した先輩マネージャーの話に花を咲かせていると、手芸屋さんが見えてきた。
わたしたちは、色とりどりの生地が並ぶそのお店に入っていった。