白球と最後の夏~クローバーの約束~
稜ちゃんは、昔からわたしが大好きだった“いちご牛乳”を覚えていてくれた。
ずるいよ、稜ちゃん・・・・。
なんでそんなに小さなことまで覚えているの?
嫌でも期待しちゃうから、忘れてくれてたほうがよかったんだよ?
ねぇ・・・・。
「買ってやるよ、つき合わせたお礼に。安くて悪いけどさ」
「・・・・ううん。ありがとう」
こんなに優しくされたら、もう我慢できなくなっちゃう・・・・。
“好き”が溢れて、自分じゃどうにもできなくなっちゃうよ・・・・。
わたし、自販機に歩いていく稜ちゃんの背中にとうとう言っちゃったんだ。
「・・・・好き。稜ちゃん」
自分にだけ聞こえるように、本当に本当に、小さな小さな声で。
囁くように。
笑われるかもしれないけど、わたしにとっては嬉しくて嬉しくて泣いてしまうほどだった。
やっぱり、稜ちゃんの“特別”になりたい・・・・。
その想いは、弱くなるどころかどんどん強くなっていく。
・・・・もう、消せない。