白球と最後の夏~クローバーの約束~
「ねぇ、稜ちゃん・・・・」
球場の外壁を見上げているとき、隣で拳を握りしめている稜ちゃんに話しかけた。
「ん?」
稜ちゃんはゆっくりとわたしを見下ろして、真っすぐでキラキラした目を向ける。
「やっとここに来れたね」
「うん」
「この夏のこと、わたし、一生忘れないから」
「うん」
「勝ってね、稜ちゃん」
「当たり前だろ? 俺には百合がくれた四つ葉がある、負ける気がしねぇ」
「そっか。そうだよね」
「百合がくれたやつ、大事に全部とってあるんだ。それがある。最高の仲間がいる。最高の彼女だっている。怖いことは1つもない」
「うん」
稜ちゃんとわたしは、みんなの目を盗んでこっそり手をつないだ。
「ここに来れてよかった。百合やみんなと来れて本当によかった」
「わたしも」
稜ちゃんとわたしがつなぐ手の力が強くなる。
「一生忘れない夏にしてやるよ。ここでも打つぜ、ホームラン」
「うん。信じてる」
そう。
信じることから全てが生まれる。