〈続〉一年後 恋の攻防戦〜クールな彼とちょっとドジな彼女の攻防戦〜
私の手首を掴んで見上げる朝陽。

「なに?」

声に刺があるってわかっていたが、モヤモヤしたままでは普通でいられない。

チラッと腕時計を見た朝陽が立ち上がり、私のトレーを奪って黒岩君に押しつけた。

「絵美悪い、先に食べててくれ。黒岩君だっけ…莉子連れて行くから、これ返しておいて」

そして連れて行かれた場所は物置部屋で…部屋に入るなり唇を塞がれる。

そんな気分になれない私は、朝陽の胸を押し抵抗した。

「なに怒ってるんだ」

普段、こちらの気持ちを先読みできるくせに、わからないなんて、ムカツク。

「怒ってない」

「怒ってるだろう」

「…ごめん。ただ、あの人が朝陽を呼びすてにしてるの見て、…嫉妬したの」

他にも色々あるけど、朝陽に言っても女心は理解できないだろうから、言わない。

「…そんなのお前だけじゃない。黒岩だっけ?あいつ慣れなれしく、莉子を名前で呼んでムカつく。それに勝手に俺の莉子に触りやがって…」

ギュギュと抱きしめて、おでこにキスを何度もする朝陽に、モヤモヤも収まっていく。

「莉子の気持ちは信用してるけど、あいつ、絶対お前に気があるから気を付けろ…隙作るなよ」

嫉妬してくれてる朝陽に嬉しくて、頬を緩め、彼の唇にキスを返した。
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