初恋ラプソディ
それから私たちは、選曲に入った。
2人で候補の曲をユーチューブで聴きながら、ああでもない、こうでもないと相談していく。
最終的に2曲に絞り、あとは先生と相談という事で落ち着いた。
「森宮、クラッシック好きなんだな。」
奏先輩が意外そうに言う。
「はい。
っていうか、オーケストラが好きなんです。
ギターよりバイオリン、電子音よりフルート
って感じ。
分かります?」
「ははっ
うん。分かる、分かる。」
くしゃっと笑った奏先輩は、一瞬でかっこいいからかわいいに変わる。
その変わり目を見た瞬間に、私の心臓がキュンと一瞬、止まった気がした。
だけど、止まったのは一瞬で、そのあと、今度はドキドキと大きな音を立ててうるさく鳴り響く。
何?
どうしたの?私。
私が自分の心臓を持ち余していると、奏先輩はパンとひとつ手を叩いた。
「よし!
じゃあ、切り替えて、今度は勉強しよう。」
私たちは、お母さんがこのために私の部屋に入れてくれた小さめの座卓に勉強道具を広げる。
「森宮は、何が苦手なんだ?」
奏先輩に聞かれた。
「あの、英語と国語…です。」
私は上目遣いに先輩の反応を伺う。
「じゃあ、数学は問題ないんだな?」
奏先輩に確認されて、それも恥ずかしくなる。
「いえ、その2つほど悲惨じゃないっていう
だけで… 」
「くくっ
じゃあ、苦手なところから行こうか。
英語、最近のテスト見せてもらっていい?」
「ええ!? 無理です!
恥ずかしすぎて見せられませんよ〜。」
「でも、苦手なところが分からないと克服の
しようがないだろ。
大丈夫。誰にも言わないし、絶対に笑ったり
しないから。」
奏先輩にそう言われて、私は渋々過去のテストを整理したファイルを差し出す。
「英語は…
和訳が苦手?
ああ、つまり、日本語が苦手なんだろ?」
奏先輩はテストのファイルをめくりながら呟く。
「うっ…
その通りです。」