不眠姫と腹黒王子~番外編~

宮side: 素



円がウキウキしながらドライヤーを準備していると、
洗面所に恵介が来て言った。


「俺コンビニ行ってくる。」

「えっ!外どしゃ降りだぞ。」

「今弱いし。
これ以上兄のイチャイチャ見てられるかよ。」

「いや、別に…」


なんかそんな風に言われると
照れるし申し訳ないな…。


「バイバイ、恵介。」

円が真顔のまま恵介に手を振った。

「うん…。また。」

「気を付けろよ。」

「兄ちゃん…」


恵介が目をそらしたまま気まずそうに俺を呼んだ。


「……ごめん…」


そう言い残して、恵介はバタバタと急ぎ足で出ていってしまった。


「恵介くん、可愛いね。いい子だね。」

円が柔らかな笑顔でそう言った。

「まぁな。バカだけどな。」

「宮にそっくり。」

「顔だけだろ。」

「可愛いところもだよ。」

「やめろ、アホ。」


円はよくこっぱずかしいことを平気で言う。

正常な俺はいつも動揺する。


「円も、恵介に迫られてちょっとは…
嬉しかったんじゃねぇの?」

うわ、言っちまった…
ダサ…

恵介がいるときは必死に我慢してたのに、
二人きりになるとすぐこれだ。

俺は円の前だと究極にカッコ悪くなる。


「う~ん…」

え、なんか悩むところ!?
不安になるんだけど…

「私、恵介くんの匂い嗅いで思ったの。」

「はぁ!?匂い!?
そんな至近距離に寄ったのかよ!」

「うん、流れで。」


あー、くそ。
やっぱ二人きりにするんじゃなかった。


「なんだよ、流れって…」


俺がイラついてそっぽを向くと、
円はそらした俺の顔の目の前に自分の顔を置いた。



< 14 / 19 >

この作品をシェア

pagetop