あくまで死んでます
プロローグ

目を開けた瞬間、
全身が粟立つのを感じた。


全身を舐め回すような、下劣な目線。

今にも飛びつかんとする、荒ぶった息遣い。

そして腿をなでる、ざらついた異形の手。



「死にたてホヤホヤの小娘だ」

「こんな新鮮なの、いったいどこから?」

「落ちてきた、本当だぞ」



"私"は寝起きが悪い。

午前中は脳みそを起こすというタスクに追われ、常に頭が朦朧とするくらいだ。

そんな"私"でもあまりに危機感を覚えたのか、皮肉にも現在自分が置かれている状況を瞬時に理解できた。



「(食われる)」



私の周囲を囲むようにして、
異形のもの……おそらく鬼が3匹。

姿形は人間と似ているが、
目と肌の質感が違う。

見ているだけで本能的に恐怖心を植え付ける。

明らかに捕食者のそれだ。



「食べちまうのかい?綺麗な顔してるぜ」

「少し遊んでからでも良いんじゃないか」

「そうだなぁ」


耳を疑った。冗談がきつい。

腿をなでる手に力が入りそうになったとき。



「……っ!息が、くさいのよ!!」

「ウグッ!いってぇーーー!!」



渾身の力で鬼を蹴り上げ、
やつらが怯んだ隙に全速力で駆ける。



「小娘ぇ!!待ちやがれーーー!!」



逃げ切れる、か?

妙に足場が悪い。

どうやらある程度賑わっている繁華街のような場所だが、頼りになるのは店の灯りのみで、視界も悪い。


ここは一体どこ?

どうしてこんなことに?

なぜ鬼が私を襲う?

以前はーーこんなことは。


いや、その前に……



「"私"は、だれ……?」
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