愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「詩音。」

「ん?」

「結婚しようか。」

 窓の外を眺めながら、挨拶をするかのように発せられたプロポーズ。聞き飽きたその言葉に、思わずため息をつきそうになった。

「言ったでしょ?結婚はできない。」

 私は苦笑いを浮かべながら、さらりとプロポーズを交わした。

 この会話は、今日で何度目だろうか。心の中でそう思いながら目も合わさず、彼を避けるようにベッドに戻った。


「詩音.....」

「それ以上言うなら、ここ出てくから。」

 それでも続けようとする成宮さんに、私は真剣そのものだった。

 すると、呆れたような表情を見せる彼。ベッドの端にゆっくり腰掛けると、私の手をギュッと握ってきた。

「出てくったって、行く場所なんてないくせに。」

 そう言って、ジッと向けられる視線。

「あるもん。」

 半ば、ムキになりながらも、声が震えた。しかし、変わらず真っ直ぐと見つめられ、私は耐えきれずに目を逸らした。

「同期にだって、あのこと言ってないんだろ?」

 そして、痛いところをついてくる彼。


 あのこと......

 私は何も言い返せないまま、ただただ黙り込んだ。


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