愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 しかし、またため息をつき、私の言葉を無視して歩き続ける須崎くん。

「なに?その反応。私なんかまずいこと言った??」

「別にー。多分、蕪木は鈍感だから分からないと思うよ。」

「ねえ、教えてくれない気?いいじゃん、私たち同期の仲じゃーん。」

 駄々をこねるように須崎くんの腕を揺さぶり、誰もいない道のど真ん中で引き止めた。

 すると彼は後ろを振り返り、じっと私を見下ろした。


「じゃあ蕪木は今、幸せ?」

 そして、唐突にそう言った。

「私?」

「うん。」

 私は、その急な質問の意図が分からないまま困惑し、須崎くんの顔を見上げた。しかし、彼の真剣な表情を見て、さっきまでのテンションは一気に沈まった。


 ふと目線を落とすと、薬指に光る指輪を見つめた。祐一にもらった婚約指輪。大きなダイヤモンドが光っていた。

 私はその指輪を見ていたら、自然と顔の筋肉が緩み、笑顔になっていた。

「うん、幸せだよ。」

 右手でその指輪をなぞりながら、心からそう思った。


 すると、須崎くんがフッと笑い、笑顔を見せる。

「そっか。それなら俺は、それだけで充分かな。」

 まさかそんな言葉が返ってくるなんて思いもせず、驚いた。私は困惑しながらまた顔を上げると、もう須崎くんは歩き出していた。

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