死んでもあなたに愛されたい



白鳥家の巫女は、代々、短命だ。



人間の域を超えた、言霊。

言葉に魂を宿す、その力には、ワケがある。


発動させるたびに、寿命を削られていくのだ。



まるで神様に成り替わろうとしているように。



そうして、人々は、口をそろえて崇め謳う。


――あぁ、彼女こそが、神の代弁者だ、と。




だから、つぅちゃんは、愛と安全の代わりに自由を捨てた。

捨てざるを得なかった。


少しでも生きていたくて。




「泣かないで、ひぃちゃん」


「……泣いてるのは、つぅちゃんのほうじゃん」




ぽろぽろ泣いてるせいで、メイクが崩れてるよ。

すっごくかわいかった顔が、ちょっとかわいいにランクダウンしちゃってる。


神様のこんな素顔、お客さんにはナイショだね。



前天冠をはずしてあげると、あたしの胸に泣き顔をうずめた。




「……ごめんね、」




あたしの霊力と、つぅちゃんの言霊。

元は、ふたつでひとつの異能だった。


あたしたちが双子に産まれ堕ちたせいで、巫女の力は分かたれた。


きっと本来ならば、お姉ちゃんであるあたしが、背負うべき宿命だっただろうに……。




「つむぎ様は……!?」

「ひとみ!」

「ひとみん、どこに……」



「しぃー」




あわただしく駆けつけた赤羽くん、魁運、マユちゃん先輩。


唇に人差し指を置くあたしに、3人一斉に口をつぐんだ。



すやすやと寝息が立つ。

あたしにもたれかかって眠るつぅちゃんの背中を、ぽんぽんと撫でた。



おつかれ様。

おやすみなさい。


あたしのかわいい妹よ。



< 138 / 329 >

この作品をシェア

pagetop