死んでもあなたに愛されたい



「……っ、ひ、とみ……」




唇を離すと、目を見開く魁運がいた。


うしろの人影がかすんでいく。

と同時に、色素のうすい茶色い瞳も閉じていった。



魁運の口が、再び近づいてくる。



え!? これは……!

セカンドキスの予感!


いいよ! 魁運にならいつでもあげる!



さあ! カモン!



触れたのは……右の肩。




「……えっ? か、魁運?」


「…………」


「ね、寝てる!?」




魁運からのごほうびキスじゃなかった!

もたれかかっただけだった! 残念!



睡魔に負けちゃうくらい、そうとう意識を持っていかれていたんだろうな。


がんばったね、魁運。よしよし、いい子。





「ひとみん! カイは平気!?」


「あ、マユちゃん先輩! ぎりぎりセーフですよ」


「そう。ならよかった……。あの不届き者はわたしが始末するわ。オネエを怒らせると怖いんだから」




マユちゃん先輩、ガチギレですね。

思う存分やっちゃってください。あたしの分も頼みます。ぼっこぼこのぎったんぎったんにして三枚おろしでよろしく。



あたしは、今、魁運のまくら係で忙しいので。


気持ちよさそうな寝顔を、じっくりたっぷり眺めさせていただきまーす!




「ん?」


「……っ、」


「魁運……?」




全然気持ちよさそうじゃない。

息は浅いし、苦しそう。



どうしちゃったの?


どうしたら魁運を救える?





――その日、魁運が目を覚ますことはなかった。



< 153 / 329 >

この作品をシェア

pagetop